おくちのがんの発見には細胞診が有効ですよ。

 こんにちは。副院長の永尾(史)です。

 

 先日、札幌で開催された日本口腔外科学会・総会に参加しました。10月の札幌は紅葉も始まっており、凛と澄んだ空気が心地よい気候でした。大倉山にも行きましたが、大きなジャンプ台と札幌の街を一望できる夜景を両方観ることができるとてもいいスポットでした。

 今回の口腔外科学会では細胞診について学んできましたのでお伝えします。

 

 

 

 毎年参加している口腔外科学会という学会ですが、その名の通り「口腔外科」に関する議論が行われます。この分野での昨今の話題はなんといっても往年のアイドルに舌がんが見つかったことと口腔外科で手術を行ったことです。舌がんの手術では、がんの切除に加えて「失った部分を補う」こと(専門的には「再建」といいます)が必要な場合があり、通常の悪い部分だけを取り除くだけの手術より大掛かりになることがあります。世界的には医師免許・歯科医師免許の制度の違いから、そのような症例は「顎顔面外科」というような分野で医師・歯科医師のダブルライセンスを持ったドクターが手掛けることが多いようです。日本では口腔外科は歯科の一分野であり、再建を伴うような大きな手術を口腔外科単独で行うことには議論があるのですが、件のアイドルの手術を口腔外科で行ったこと、また本人のブログやテレビなどを通じて口腔外科の名称が連日報道されたことは日本国民に大きなアピールになったと思います。

 また、同時にブログでは最初に「口内炎かな?」と疑い、いくつかの歯科医院を受診したことも報告されています。舌がんは最初に小さいものができてだんだん大きくなる病気です。つまり、最初にかかったいくつかの歯科医院では初期の舌がんを「見逃していた」ことになります。これはわれわれ歯科医師全体にとって由々しき事態です。国民の口腔の健康を守る歯科医師としてはあってはならないことですが、実際のところ初期の舌がんは口内炎などの悪性ではない病気に見えることもあるのです。確かめるためには組織検査やもっと侵襲(刺激)の少ない細胞診という検査もあります。最初の歯科医院で見た目だけの判断ではなく細胞診などの検査が行われていれば、もっと早い段階で(初期の状態で)がんを発見することができ、再建の必要のない小さな手術で治った可能性もあります。これは日本の歯科医師全体の反省でもあります。

今回の口腔外科学会では細胞診についてのセミナーも開催されており、わたしも受講しました。当院では以前から細胞診を行える体制を整えております。気になる場合はいつでもご相談ください。

 

 秋も深まり、というか一気に冬が訪れそうなほど冷え込んできていますが皆さまも体調にはお気を付けください。おくちのトラブルについても随時ご相談を受け付けておりますので、気になる方もそうでない方もご予約をお待ちしております。

 

2019年10月29日